☆精神の障害 日常生活の状況からみる障害等級の目安とは
今回は精神障害の等級判定ガイドラインについて解説します。
障害年金の認定基準は「障害認定基準」に定められています。
精神の障害については障害認定基準を補うかたちで「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」において、障害等級の判定時に用いる目安や考慮すべき事項の例などが示されています。
このガイドラインの対象となる傷病は「障害認定基準第3第1章第8節精神の障害に定める傷病」のうち、てんかんを除く「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害」「気分(感情)障害」「症状性を含む器質性精神障害」「知的障害」「発達障害」です。
障害認定基準に基づく障害の程度の認定については、このガイドラインで定める「障害等級の目安」を参考としつつ、様々な要素を考慮したうえで、障害認定審査医員が専門的な判断に基づき、総合的に判定するとしています。
「障害等級の目安」とは、精神障害用の診断書の記載項目のうち「日常生活能力の判定」の評価及び「日常生活能力の程度」の評価の平均を組み合わせたものが、どの障害等級に相当するかの目安です。
1.日常生活能力の判定
精神障害の診断書には「日常生活能力の判定」について、以下に挙げる7つの項目があります。
適切な食事 | 配膳などの準備も含めて適当量をバランスよく摂ることができるなど。 |
身辺の清潔保持 | 洗面、洗髪、入浴などの身体の衛生保持や着替えなどができる。 また自室の掃除や片づけができるなど。 |
金銭管理と買い物 | 金銭を独力で適切に管理し、やりくりができる。 ひとりで買い物が可能であり、計画的な買い物ができるなど。 |
通院と服薬 | 規則的に通院や服薬を行い、症状などを主治医に伝えることができるなど。 |
他人との意思伝達 および対人関係 | 他人の話を聞く、意思を相手に伝える、集団行動が行えるなど。 |
身辺の安全保持および危機対応 | 事故などの危機から身を守る能力がある、通常と異なる事態となったときに他人に援助を求めるなどを含めて、適正に対応することができるなど。 |
社会性 | 銀行での金銭の出し入れや公共施設などの利用が一人で可能。 また社会生活に必要な手続きが行えるなど。 |
上の7項目について、単独で生活するとしたら可能かどうかを想定して以下の4段階評価をします。
1 | できる |
2 | おおむねできるが時には助言や指導を必要とする |
3 | 助言や指導があればできる |
4 | 助言や指導をしてもできない、もしくは行わない |
2.日常生活能力の程度
つぎに「日常生活能力の程度」です。
(1) | 精神障害(病的体験・残遺症状・認知障害・性格変化等)を認めるが、社会生活は普通にできる。 |
(2) | 精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には援助が必要である。 |
(3) | 精神障害を認め、家庭内の単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。 |
(4) | 精神障害を認め、日常生活における身の回りのことも、多くの援助が必要である。 |
(5) | 精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。 |
3.障害等級の目安
「日常生活能力の判定」は7つの項目に対する評価の平均値を算出し、「日常生活能力の程度」とあわせて下の表にあてはめたものが、等級の目安となります。
(5) | (4) | (3) | (2) | (1) | |
3.5以上 | 1級 | 1級または 2級 | |||
3.5未満 3.0以上 | 1級または 2級 | 2級 | 2級 | ||
3.0未満 2.5以上 | 2級 | 2級または 3級 | |||
2.5未満 2.0以上 | 2級 | 2級または 3級 | 3級または 3級非該当 | ||
2.0未満 1.5以上 | 3級 | 3級または 3級非該当 | |||
1.5未満 | 3級非該当 | 3級非該当 |
(表内の3級は、障害基礎年金は2級非該当とします)
例えば「日常生活能力の判定」平均が2.9、「日常生活能力の程度」が3であれば2級または3級(障害基礎年金は2級非該当)となり、これを参考としながら総合的に判定されるということになります。
「日常生活能力の程度」の評価と「日常生活能力の判定」の平均との整合性が低く、参考となる目安がない場合には、必要に応じて診断書を作成した医師に内容確認などをしたうえで、「日常生活能力の程度」及び「日常生活能力の判定」以外の診断書などの記載内容から様々な要素を考慮して総合評価を行うとしています。