☆神経症は障害年金を諦めなければいけない?

神経症は原則として障害年金の対象とはされていません。
精神の障害は「統合失調症、統合失調症型障害および妄想性障害」、「気分(感情)障害」、「症状性を含む器質性精神障害」、「てんかん」、「知的障害」、「発達障害」に区分され、ほとんどの精神疾患について障害年金の対象とされますが、人格障害と神経症はその対象となっていないのです。

では神経症であった場合、障害年金の受給は諦めなければいけないでしょうか?

1.認定基準

以下、障害認定基準 第8節/精神の障害より抜粋します。

人格障害はパーソナリティ障害ともいわれます。

また神経症にはパニック障害、強迫性障害、外傷後ストレス障害、適応障害、解離性障害、広場恐怖症などがあります。

2.神経症が障害年金の対象とならない理由

神経症はなぜ障害年金の対象とならないのでしょうか。

それは神経症がもつ2つの特徴が影響しています。

自己治癒可能性

ひとつめは「自己治癒可能性」です。
自己治癒可能性は患者がその疾病を認識してそれに対応した対応を採ることが可能である、その状態から引き返し主体的に治癒に持ち込むことが可能であるとされています。

疾病利得

ふたつめは「疾病利得」という考え方です。
疾病利得はその症状の発現やその症状が続くことによって引き起こされる患者本人が心理的あるいは現実的満足を得るということ。例えば仕事や学校を休むことができたり責任から解放される、周囲の関心や同情を集めることができるといった無意識的な利益のことで、患者本人の積極的な改善の意識を阻害する状態です。

3.神経症は障害年金の対象となり得る

神経症について、『その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取り扱う。なお、認定に当たっては、精神病の病態がICD-10による病態区分のどの区分に属す病態であるかを考慮し判断すること』とあり、例外的に認定の対象となり得ることを明記しています。

では「精神病の病態」とはどのようなものでしょうか。

平成21年(厚)第404号 平成22年5月31日裁決より抜粋します。

『本件事案とは別の事案に係るこれまでの審理における当事者の陳述その他から、「精神病の病態を示しているもの」についての理解として、
①従来同様、患者・家族に告知した診断疾病名と異なり、正しい疾病名は精神病に属する疾病の集合である精神病圏に属する疾病名であるということ、
②疾病は精神病圏に属しておらず神経症圏に属しているが、その呈する臨床症状が、憂うつ気分や幻覚・妄想といった、「準じて取り扱う」とされたそううつ病や統合失調症と共通のものであること、
③統合失調症ないしそううつ病と共通の臨床症状を呈し、それによる精神障害の程度が、精神医学における「精神病水準」にあること、
④統合失調症ないしそううつ病と共通の臨床症状に限らず、精神疾患が示す臨床症状を呈し、それによる精神障害の程度が「精神病水準」にあること、
⑤単純にその臨床症状による精神障害が精神病によるそれと同一レベルにあるということ、の5タイプがあることが窺われる。』
『(11)これら5タイプのうち、どれが「精神病の病態を示しているもの」の定義としてふさわしいかについては、40年改正で神経症も法令上は対象傷病となり得るとされたこと、一方、自己治癒可能性が高く疾病利得がある段階のものを障害給付の対象とすることは、制度の趣旨・目的に反し、社会保険制度につきもののモラルハザードを低減させる観点から好ましくないことから言って、前記 (9) の④が最も望ましいと言えるが、いずれにせよ、保険者は、早急にその定義を明らかにすべきである。』

憂うつ気分や幻覚・妄想などがある、統合失調症や躁うつ病と共通の臨床症状があったり、統合失調症や躁うつ病と共通の臨床症状がない場合でも精神疾患が示す臨床症状がありその程度が「精神病水準」であるということになり、障害年金の対象となり得るということです。

ご自身に障害年金の対象となる精神病相当の症状があるか、主治医の先生に相談されてもいいかもしれません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA