☆神経系統の障害と障害年金
障害年金に特化した美帆社会保険労務士事務所の小池美帆です。
今回は障害年金からみた神経系統の障害について解説します。
神経系統の障害は脳や脊椎、末梢神経などの神経が侵されることで起こる病気だが、具体的にはどのような病気が該当するのか?
障害認定基準はどのようなものなのか?
どのような状態のときに障害等級に該当するのか?
これらのことをご紹介します。
神経系統の障害とは脳や脊髄、末梢神経などの神経が侵されることで起こる病気でその症状は多岐にわたります。
◆脳卒中(脳梗塞/脳出血/くも膜下出血)
◆パーキンソン病
◆アルツハイマー病
◆てんかん
◆多発性硬化症
◆重症筋無力症
◆脳炎・髄膜炎
◆脊髄小脳変性症
◆脊髄損傷
◆ハンチントン病
◆筋ジストロフィー
◆急性脳症
など・・・
神経系統の認定基準
1級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3級 | ①の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの ②神経系統に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの |
障害手当金 | ①身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの ②神経系統に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの |
神経系統の障害認定要領(認定基準より抜粋)
(1) 肢体の障害の認定は、本章「第7節 肢体の障害」に示した認定要領に基づいて認定を行う。
(2) 脳の器質障害については、神経障害と精神障害を区別して考えることは、その多岐にわたる臨床症状から不能であり、原則としてそれらの諸症状を総合し、全体像から総合的に判断して認定する。
(3) 疼痛は、原則として認定の対象とならないが、四肢その他の神経の損傷によって生じる灼熱痛、脳神経及び脊髄神経の外傷その他の原因による神経痛、根性疼痛、悪性新生物に随伴する疼痛、糖尿病性神経障害による激痛等の場合は、疼痛発作の頻度、強さ、持続時間、疼痛の原因となる他覚的所見等により、次のように取り扱う。
ア 軽易な労働以外の労働に常に支障がある程度のものは、3級と認定する。
イ 一般的な労働能力は残存しているが、疼痛により時には労働に従事することができなくなり、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるものは、障害手当金に該当するものと認定する。
(4) 神経系の障害により次のいずれかの状態を呈している場合は、原則として初診日から起算して1年6月を経過した日以前であっても障害認定日として取り扱う。
ア 脳血管障害により機能障害を残しているときは、初診日から6月経過した日以後に、医学的観点から、それ以上の機能回復がほとんど望めないと認められるとき。
イ 現在の医学では、根本的治療方法がない疾病であり、今後の回復は期待できず、初診日から6月経過した日以後において気管切開下での人工呼吸器(レスピレーター)使用、胃ろう等の恒久的な措置が行われており、日常の用を弁ずることができない状態であると認められるとき。
認定要領(1)、神経系統の障害によって肢体に障害が出ているとき障害年金の対象となる扱いです。
肢体の障害については以下の通りとなります。
1級 | ①両上肢の機能に著しい障害を有するもの(以下「両上肢の用を全く廃したもの」という。) ②両上肢の全ての指を欠くもの(以下「両上肢の全ての指を基部から欠き、有効長が0のもの」という。) ③両上肢の全ての指の機能に著しい障害を有するもの(以下「両上肢の全ての指の用を全く廃したもの」という。) |
2級 | ①両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を欠くもの(以下「両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を基部から欠き、有効長が0のもの」という。) ②両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の機能に著しい障害を有するもの(以下「両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の用を全く廃したもの」という。) ③一上肢の機能に著しい障害を有するもの(以下「一上肢の用を全く廃したもの」という。) ④一上肢の全ての指を欠くもの(以下「一上肢の全ての指を基部から欠き、有効長が0のもの」という。) ⑤一上肢の全ての指の機能に著しい障害を有するもの(以下「一上肢の全ての指の用を全く廃したもの」という。) ⑥身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3級 | ①一上肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの ②長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの ③一上肢のおや指及びひとさし指を失ったもの又はおや指若しくはひとさし指を併せ一上肢の3指以上を失ったもの(以下「一上肢のおや指及びひとさし指を近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)以上で欠くもの又はおや指若しくはひとさし指を併せ、一上肢の3指を近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)以上で欠くもの」という。) ④おや指及びひとさし指を併せ一上肢の4指の用を廃したもの ⑤身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの |
障害手当金 | ①一上肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残すもの ②長管状骨に著しい転位変形を残すもの ③一上肢の2指以上を失ったもの(以下「一上肢の2指以上を近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)以上で欠くもの」という。) ④一上肢のひとさし指を失ったもの(以下「一上肢のひとさし指を近位指節間関節以上で欠くもの」という。) ⑤一上肢の3指以上の用を廃したもの ⑥ひとさし指を併せ一上肢の2指の用を廃したもの ⑦一上肢のおや指の用を廃したもの ⑧身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの |
疼痛は原則として認定の対象とはなりません。しかし認定要領(3)の通り症状があり、それによって労働に制限がでる場合は3級もしくは障害手当金の対象となることが示されています。
また障害認定日についても言及されています。
認定要領(4)では初診日から6か月を経過した日以降にその状態になった場合、症状固定として障害認定日として取り扱うとしています。