☆線維筋痛症、障害年金を請求するときの注意点
こんにちは!障害年金に特化した美帆社会保険労務士事務所の小池美帆です。
今回は線維筋痛症で障害年金を請求する場合の注意点についてお話します。
線維筋痛症の診断の難しさ
線維筋痛症は3か月以上継続して身体の広範の部位に疼痛をきたす原因不明の慢性疾患で、リウマチ疾患に分類されています。炎症反応はなく、痛み以外に身体の強いこわばりとともに激しい疲労感や頭痛、不眠、うつ状態などの精神的な症状を伴うことがあります。
以下がみられる場合、診断として線維筋痛症が疑われます。
・全身性の疼痛および圧痛、特に身体所見と不釣り合いな場合
・広範囲の症状にもかかわらず臨床検査の結果が陰性
・主症状として疲労
広範囲にわたる疼痛が3か月以上続いている場合には線維筋痛症の診断が考慮され、線維筋痛症以外の原因を調べるために血液検査や画像検査などいくつかの検査を行います。線維筋痛症では典型的にそれらの検査で異常がみられないため、線維筋痛症以外の原因が否定されます。
逆に言うと血液検査や画像検査でも診断の決め手となるような検査所見がなく、線維筋痛症の診断がでるまでに時間がかかること、診断がでる前に通院を止めてしまい症状が悪化してしまうなどの難しさがある病気です。
障害年金請求代行をさせていただく場合にも初診日や等級の目星をつけるのが難しく、ご依頼者から詳しくヒヤリングさせていただき進めていく必要があります。
線維筋痛症の重症度と障害年金の認定基準
線維筋痛症の重症度は5段階に分類されます。
線維筋痛症「重症度分類試案」(厚生労働省)
ステージ1 | 米国リウマチ学会診断基準の 18 カ所の圧痛点のうち 11 カ所以上で痛みがあるが、日常生活に重大な影響を及ぼさない。 |
ステージ2 | 手足の指など末端部に痛みが広がり、不眠、不安感、うつ状態が続く。日常生活が困難。 |
ステージ3 | 激しい痛みが持続し、爪や髪への刺激、温度・湿度変化など軽微な刺激で激しい痛みが全身に広がる。自力での生活は困難。 |
ステージ4 | 痛みのため自力で体を動かせず、ほとんど寝たきりの状態に陥る。自分の体重による痛みで、長時間同じ姿勢で寝たり座ったりできない。 |
ステージ5 | 激しい全身の痛みとともに、膀胱や直腸の障害、口の渇き、目の乾燥、尿路感染など全身に症状が出る。普通の日常生活は不可能。 |
これらの症状により次の認定基準に該当するとき、障害年金の対象となります。
障害年金の認定基準
1級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものとする。この日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度とは、他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ずることができない程度のものである。 |
2級 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。この日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度とは、必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のものである。 |
3級 | 労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。 また、「傷病が治らないもの」にあっては、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものとする。 |
1級は主に活動の範囲がベッド周辺に限られ、他人の介助がなければ日常生活のほとんどができないほどの障害の状態。
2級は活動の範囲が家の中に限られ、家庭内の軽作業はできるが日常生活に著しい制限を受けるか、または日常生活に著しい制限を加える日必要があるほどの障害の状態。
3級は労働が著しい制限を受ける、または労働に著しい制限を加えることを必要とする状態です。
診断書の重要事項
障害年金の請求に必須な医師からの診断書には必ずステージを記載する必要があります。
以下の通達が出ています。(クリックでご覧いただけます)
「線維筋痛症の障害状態について診断書を作成されるお医者様へ」(日本年金機構)
また線維筋痛症は症状に対する客観的な診断基準がないため、どのような症状で具体的にどんなことが困難であるか、日常生活にどのような影響がでているかを患者本人から主治医へ正確に伝える必要があります。
特に線維筋痛症に使用する診断書(「肢体の障害用」様式第120号-3)に「日常生活における動作の障害の程度」や「現症時の日常生活活動能力及び労働能力」を記載する欄があり、日常生活の状況を主治医へ正しく伝えていないと記載が困難となったり、実際の症状よりも軽く記載されてしまう場合もあります。
常に主治医と日常生活をどう過ごしているか共有しておくことが大切です。
線維筋痛症の初診日について
初診日とは、疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日をいいます。
しかし線維筋痛症はその症状の特性と、いくつかの病院を回ってやっと確定診断がでるパターンも多いため、初診日の判断が難しいです。
日本年金機構から令和3年8月24日に「線維筋痛症等に係る障害年金の初診日の取扱いについて(厚生年金保険法)」が出されており、その通達によると以下の通りとなります。
1.障害の原因となる線維筋痛症等に係る一連の診療のうち、初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日を障害年金初診日として取り扱う。
申立初診日における診療が線維筋痛症等に係る一連の診療のうち初めての診療であると認められる場合には、申立初診日(請求者が申し立てた初診日)を障害年金初診日として取り扱うものとする。
2.①から③までのいずれにも該当する場合は、線維筋痛症等に係る申立初診日を障害年金初診日として取り扱うことができるものとする。
①申立初診日に係る医療機関が作成した診断書又は受診状況等証明書の記載内容から、申立初診日において、請求者が線維筋痛症等の症状に係る診療を受けていたものと認められること。例えば、申立初診日に係る医療機関が作成した診断書又は受診状況等証明書の記載内容から、線維筋痛症に係る申立初診日において、請求者が身体の広範囲に及ぶ慢性疼痛について診療を受けていたものと認められる場合。
②確定診断を行った医療機関が作成した診断書(確定診断に基づき他の医療機関が作成した診断書を含む。)において、申立初診日が線維筋痛症等のため初めて医師の診療を受けた日として記載されていること。
③発症直後に確定診断が行われなかった理由に関する申立てが行われていること。
2の①~③はこれらの場合以外であっても個別に考慮して、申立初診日における診療が一連の診療のうち初めての診療であると認められる場合には、申立初診日を障害年金初診日として取り扱うとしています。
「線維筋痛症等に係る一連の診療」の判断は非常に難しく、実際に医療機関から出される書類を確認するまで分からない場合があるかと思います。
これから障害年金の請求をお考えの場合は、医療機関からの診断書をしっかりと確認し、「病歴・就労状況等申立書」と相違がないように準備することが重要です。