☆悪性新生物(がん)による障害と障害年金

障害年金に特化した美帆社会保険労務士事務所の小池美帆です。

今回は障害年金からみた悪性新生物による障害について解説します。

1.悪性新生物とされるがんの種類にはなにがあるのか?

悪性新生物の病名には以下のようなものがあります。

◆白血病
◆リンパ腫
◆肺がん
◆胃がん
◆大腸がん
◆乳がん
◆肉腫
◆子宮がん
◆卵巣がん
◆舌がん


悪性新生物は全身のほとんどの臓器に発生するので症状も障害も様々です。そのため悪性新生物による障害の程度は、組織所見とその悪性度、一般検査及び特殊検査、画像検査等の検査成績、転移の有無、病状の経過と治療効果等を参考にして具体的な日常生活状況等により、総合的に認定することとなります。

悪性新生物による障害は3つに区分されます。

①悪性新生物そのもの(原発巣、転移巣を含む。)によって生じる局所の障害②悪性新生物そのもの(原発巣、転移巣を含む。)による衰弱や機能の障害③その治療の効果として起こる全身衰弱と機能障害です。

2.悪性新生物で障害年金を受給するための認定基準はどのようなものなのか?

障害認定基準

1級身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

悪性新生物の悪性度や検査結果、病状の経過や治療効果、日常生活状況等で総合的に認定するものとして、『当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に、また、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものを3級に該当するものと認定する』としています。

3.どのような状態が障害等級に該当するのか?

以下、認定要領より抜粋

(4) 悪性新生物による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりである。
一般常態区分

区分   一 般 状 態
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの
例えば、軽い家事、事務など
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

(5)悪性新生物による障害の程度は、基本的には認定基準に掲げられている障害の状態を考慮するものであるが、各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

障害の程度   障 害 の 状 態
1級著しい衰弱又は障害のため、一般状態区分表のオに該当するもの
2級衰弱又は障害のため、一般状態区分表のエ又はウに該当するもの
3級著しい全身倦怠のため、一般状態区分表のウ又はイに該当するもの

(6) 悪性新生物そのものによるか又は悪性新生物に対する治療の結果として起こる障害の程度は、本章各節の認定要領により認定する。

(7)悪性新生物による障害の程度の認定例は、(5)に示したとおりであるが、全身衰弱と機能障害とを区別して考えることは、悪性新生物という疾患の本質から、本来不自然なことが多く、認定に当たっては組織所見とその悪性度、一般検査及び特殊検査、画像診断等の検査成績、転移の有無、病状の経過と治療効果等を参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。

(8) 転移性悪性新生物は、原発とされるものと組織上一致するか否か、転移であることを確認できたものは、相当因果関係があるものと認められる。


障害年金の額の改定請求は、受給権を取得した後もしくは障害の程度の審査を受けた日から1年を経過した日からすることができます。しかし障害が急激に悪化した場合、また特定の障害の状態に該当した場合は1年を待たずいつでも額改定請求をすることが可能です。

悪性新生物で2級3級に認定された場合、病気の性質上、急激に症状が悪化したとしても1年を経過するまで改定請求をすることができません。障害が急激に悪化しても、先の認定から一年間はその等級となります。
最初の請求で不支給決定であれば、1年以内に急激に悪化した場合再度裁定請求をして障害認定された事例もあります。

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